わたしのカスピ海ヨーグルト
2016/07/08
2016/06/27付け毎日新聞・朝刊の記事「インタビュー 最前線」は、フジッコの社長さんでした。
その中で、「カスピ海ヨーグルトの売り上げを早期に100億円に到達したい」とあり、驚きました。
フジッコさんのHPをのぞくと、カスピ海ヨーグルトについていろんな情報が詳細に、かつ懇切丁寧に記載されています。
その中で、「粘りが不足し、原因究明のため昨年から今年にかけて一時期、生産を中止した」とありましたが、
技術者はその事態に遭遇して、きっと真っ青になったことでしょう。
菌を植え継いでいくうちに、性質が変わることがあります。
例えば、生産量が少なくなる、栄養要求が変わるなどですが、
そのために、いい状態のときの菌を冷蔵庫や超低温槽(-80℃)に保存しておきます。
そうした菌株がたくさん集まりますので、家系図みたいに系統立てて記録しておきます。
おかしくなったら、これらの保存菌株を取り出して新たな種菌とします。
フジッコのHPには種菌の植え継ぎについて、つくったヨーグルトの一部を次回のヨーグルトづくりに使うことを、
それは2回を限度に、それ以上は新たな粉末種菌を用いることを推奨しています。
でも、これって、カスピ海ヨーグルトを作っている限り延々と種菌を買うはめになってしまいます。
○○地獄ってありますが、これです。サプリメントをやめるにやめられないなど・・。
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私もかれこれ20年近く、カスピ海ヨーグルトをつくっています。
その前はヨーグルトきのこをつくっていましたが、飲む度に金網のザルで濾過する必要があり大変でした。
種菌は大阪府立大学からいただき、職場内でも職員に自作の説明書をつけて頒布していました。
なお、種菌の頒布はできませんので、あしからずご了承ください。フジッコさんから買ってください。
さて、わたしの作り方を紹介しましょう。○○地獄からの脱出です。
まずは、その前にフジッコさんの方法です。汚い手書きで、すみません。
■フジッコさんの方法、
粉末種菌でつくったヨーグルトの一部を次回のヨーグルトづくりに用いる、簡便な方法です。
植え継ぎは2回を限度に、それ以上は新たな粉末種菌を用いることを推奨しています。
確かに、この方法では、雑菌混入の危険性は大きいでしょうが、
一方では、雑菌混入の多い環境下を生きてきたのですから、
カスピ海ヨーグルトは雑菌汚染に強いとも言えます。
■わたしの方法(新しいつくり方)
わたしの方法は、あらかじめ種菌をたくさん作って冷蔵保存しておき、それを順次、使うことです。
この方法は、事前に種菌を作っておく必要がありますが、一度にに沢山つくっておけば、あとは楽です。
雑菌混入の恐れが少なく、粉末種菌を買い続ける必要もありません。
もっとも、最も楽な方法は、植え継ぎなしで粉末種菌を使うことです。
お金に余裕がある方はどうぞ、そちらの方法で・・。
ポイントは、種菌づくりに遠沈管を用いることで、植え継ぎが続けられることです。
1.種菌の作り方
1)圧力釜の場合:蓋を少し緩めた容量50mlの遠沈管を圧力鍋に10〜15分間入れて加熱します。
電子レンジの場合:遠沈管(50ml容)に水を10ml程度入れて蓋を充分緩めて加熱します。
500Wの場合、1分半〜2分で沸騰します。
2)冷却後、遠沈管たてに移します。
3)牛乳を約40ml入れます(目盛りがあるので便利です)。
4)種菌を5〜10g (小さじ1〜2杯)入れて、よく混ぜます。
粉末種菌の場合も、いったんヨーグルトをつくります。
5)蓋を少し緩めて、カスピ海ヨーグルトメーカー内に置きます。14本ぐらい入るはずです。
6)温度を26〜27℃にセットし、スイッチを入れて加温します。
7)ヨーグルトができたら、スイッチを切ります、
8)蓋を閉めて、遠沈管たてに移して冷蔵庫で保存します。
2.カスピ海ヨーグルトのつくり方
1)冷蔵庫で保存している種菌を使います。
2)ビンに牛乳を500mlより少なめに入れて、種菌を全て投入します。
3)壁面についている種菌は少量の牛乳で洗い、ビンに移します。
4)最後は牛乳を加えて500mlにします。
5)カスピ海ヨーグルトメーカーに入れて、26〜27℃で保温します。蓋は少しだけ緩めておきます。
6)完成したら、遠沈管立てに移して、冷蔵庫で保存します。
(注意)
○種菌を遠沈管に移す操作は、できるだけ雑菌が入りにくい環境下で行ってください。
例えば、換気扇を回さない状態で、点火しているガスコンロの側で行う。落下菌が少なくなります。
長時間は不可です。昭和レトロの方法です。
○スプーンは、熱湯、あるいは火炎で炙って殺菌したものを用います。
3.ご参考(種菌づくり、ヨーグルトづくりで用いる主な器材)
遠沈管 本来は、試料を遠心分離するために用いるのですが、試料の保存など広く使われています。理化学機器店が取り扱っていますが、ネットでも買えるようです。ただし購入は袋単位(80〜100本)、箱単位(10〜20袋)となるようです。一本当り100円ぐらい。安定性からスカートがついた自立式が便利で、遠沈管たてもあった方がいいです。ここでは容量50ml(直径30mm、長さ118mm)を用います。タニカのヨーグルトメーカーの内容器には14本ほど入りそうです。写真は、深江化成製の優れもの(蓋の密閉性)です。
遠沈管たて 遠沈管立て(幅広の試験管立て)には、ステンレス製とプラスチック製があります。本数によって、値段が大きく変わります。数千円と高価です。
それで自作します。と言ってもたいしたことはありません。日ごろから、トイレットペーパーの芯をためておきます。日頃の貧乏性が役に立ちます。ラップの芯でもよい。小さな箱に、これを詰めれば出来上がりです。キムワイプの場合、3×3で9本立てることができます。もちろん、芯は箱の高さに切ります。
圧力鍋 全ての菌を殺す滅菌が期待できます。オートクレーブ(加圧滅菌器)があれば最高ですが高額です。たまにオークションに出品されますが、人気が高く、落札価格も高くて手が出ません。
市販の圧力鍋を使います。新たに買っても数千円で済みます。底部に鍋敷き(セリアで購入)を置いて水を張ります。この水が蒸気となり、空焚きしません。更にその上に蒸し器を置きます。遠沈管はプラスチックなので内側の壁にあたると融けます。当たらないようにするためです。
簡易な殺菌方法としては、遠沈管に水を10mlほど入れて電子レンジで加熱、沸騰させます(500Wで1分半〜2分)。
培養ビン 容量500mlのガラス瓶です。遠沈管の容量は50mlなので、10%植菌とすると瓶の容量は500mlが適量です。ヨーグルトを作る際、わたしは、特に、加圧鍋や熱湯での消毒はしていません。冷却の後に、牛乳を加えてください。熱いうちに冷たい牛乳を加えると耐熱性でないので割れるので、注意が必要です。注:百均ショップのガラス瓶の実際に使える量は400mlでした。計量カップも、実際はそこまで使えません。コストダウンでしょう。理化学器材と違います。今頃、気がつきました。